自己保持回路のラダー図での書き方(GX Works3・PLCプログラム視点)
自己保持回路とは
自己保持回路とは、押しボタンを一度押してから離しても、出力が動き続ける回路の仕組みです。押している間だけ出力が出る回路(一時的な接点回路)と対比して理解するとわかりやすいです。
現場でいえば、コンベアやポンプ・ファンの起動保持がわかりやすい例です。「起動ボタンを押す → モーターが回り始める → ボタンを離してもモーターが回り続ける → 停止ボタンを押したら止まる」というのが自己保持回路の基本動作です。もしボタンを押している間しかモーターが回らなければ、作業者はずっとボタンを押し続けなければならなくなります。これは実用にならないため、自己保持回路はシーケンス制御の出発点といえる基本パターンです。
展開接続図(シーケンス回路図)での自己保持については、電磁接触器の補助接点:自己保持回路と寸動回路の作り方でリレーシーケンスの視点から詳しく解説しています。本記事ではそのPLC版、つまりGX Works3のラダー図での書き方に絞って整理します。
本記事で使う用語
| 用語 | 説明 |
|---|---|
| ラング | ラダー図の横1行。左右の母線をつなぐ横棒1本のこと |
| a接点 | 通常は開いており、コイルが励磁されると閉じる接点 |
| b接点 | 通常は閉じており、コイルが励磁されると開く接点 |
| コイル | 出力を表す記号。条件が成立すると励磁(ON)になる |
ラダー図での書き方(a接点・b接点版)
ラダー図は電気回路の展開接続図をそのままPLCのプログラム表現に置き換えたものです。左母線から右母線へ電流が流れるイメージで読むと、展開接続図の経験がそのまま活きます。
自己保持回路のラダー図は3段階のステップで理解するのが確実です。
ステップ1:起動だけの回路(基本形)
まず最もシンプルな形から始めます。X0のa接点を1つ置き、右端にY0のコイルを置くだけの1ラングです。
このラングの動作はこうです。X0(起動ボタン)を押している間はX0のa接点が閉じてY0コイルに電流が流れ、Y0が出力されます。しかしX0から手を離すとa接点が開き、Y0は即座に消えます。
これはいわゆる「寸動(インチング)」の動作です。機械を少しだけ動かして位置を確認したい場合には使えますが、連続運転には使えません。
ステップ2:自己保持接点を追加
Y0が出力されたとき、Y0自身の補助a接点をX0と並列に接続します。これが「自己保持」の核心です。
動作の流れはこうです。X0を押す → X0のa接点が閉じる → Y0コイルが励磁 → Y0の補助a接点が閉じる → X0から手を離してもY0の補助a接点経由で電流が流れ続ける → Y0が保持される。
Y0自身が「自分を保持するための接点を閉じる」という動作をするため、これを自己保持と呼びます。ラダー図上では、Y0コイルと同じデバイス番号(Y0)のa接点をX0と並列(縦に並べる)に配置することで表現します。
ステップ3:停止ボタンを追加して完成
自己保持しっぱなしでは止められません。X1のb接点を直列に追加して停止機能を持たせます。
X1(停止ボタン)を押すとX1のb接点が開き、Y0コイルへの電流経路が切れます。Y0コイルが消磁されると同時にY0の補助a接点も開くため、X1を離してもY0は保持されません。自己保持が解除された状態です。
このラングで使うデバイスの割り当ては次のとおりです。
| デバイス | 種別 | 役割 |
|---|---|---|
| X0 | a接点(入力) | 起動ボタン |
| X1 | b接点(入力) | 停止ボタン |
| Y0 | コイル(出力) | 出力コイル |
| Y0 | a接点(補助) | 自己保持用接点 |
停止ボタン側がb接点になる点に注意してください。押しボタンスイッチの実機はa接点(常開)のものを使い、PLC入力に接続します。PLCのプログラム上でX1をb接点として使うことで、「押されていない平常時はX1のb接点が閉じている → 回路が通電できる状態」という論理になります。
なお現場では、停止ボタンの実機にb接点(常閉)を使い、PLCのプログラム側ではX1のa接点を直列に入れる流儀もあります。平常時にX1がONで、停止ボタンを押すか配線が断線すればX1がOFFになる=どちらでも停止側に倒れるためです。本記事は実機a接点を前提に説明していますが、停止線の断線で「停止ボタンが効かないまま運転が続く」状態を避けたい回路では、実機b接点側を検討してください。これはPLCを通す通常停止の話で、非常停止は安全リレー等でPLCを介さず主回路を切る別の領域です(非常停止回路のハードワイヤ)。
SET/RST命令で書く方法
GX Works3のラダー図にはa接点・b接点によるコイル駆動以外に、SET命令とRST命令を使う方法があります。SET命令は「そのデバイスを強制的にONにする」命令で、RST命令は「強制的にOFFにする」命令です。一度SETされたデバイスは、RSTが実行されるまでONの状態を保ち続けます。これが自己保持の機能をそのまま命令に持たせた形です。
a接点・b接点版との最大の違いは、停止側の入力(X1)がa接点になる点です。a接点・b接点版ではX1をb接点として直列に入れていましたが、SET/RST版ではX1のa接点が閉じたとき(押されたとき)にRST命令が実行されてY0がOFFになります。
ラダー図の構成は2ラングになります。
- ラング1:X0(a接点)→ SET Y0
- ラング2:X1(a接点)→ RST Y0
X0を押すとSET Y0が実行され、Y0がONになります。Y0はその後X0から手を離してもONを保持します。X1を押すとRST Y0が実行され、Y0がOFFになります。RSTの後はX1を離しても再びSETが実行されるまでY0はOFFのままです。
自己保持用の補助接点を別途用意する必要がなく、ラダー図の記述がすっきりします。PLC特有の命令を使う分、「PLCらしい書き方」といえます。
2つの方法の違いと使い分け
どちらの方法も動作結果は同じですが、現場での読まれ方や使われる場面には違いがあります。
| 項目 | a接点・b接点版 | SET/RST版 |
|---|---|---|
| 停止ボタンの接点種別 | b接点(X1) | a接点(X1) |
| ラング数 | 1ラング | 2ラング |
| 直感的な読みやすさ | リレーシーケンス経験者に馴染む | PLC的な書き方 |
| 現場でよく見る場面 | 既設設備・改修案件 | 新規PLCプログラム |
既設設備の改修や展開接続図からPLCへの移植案件では、a接点・b接点版のほうが元の回路図との対応が取りやすく、図面確認も楽です。一方、ゼロから新規でPLCプログラムを書く場合や、複数のデバイスを同時にSET/RSTする処理が多い場合はSET/RST版のほうがスッキリ書けます。
現場によって「ここのプログラムはコイル版で書く」「このクラスの機械はSET/RST統一」といったルールがあることもあります。チームや客先の標準に合わせるのが現実的な判断です。
この「保持する」という考え方が実務でいちばん出てくるのは、起動保持よりもむしろ異常(アラーム)回路です。異常は原因が消えても記録を消してはいけないので保持が要り、しかもリセット側には自己保持にはない条件が付きます——原因が消えている状態でリセットボタンを押したときだけ解除する(原因が残ったまま消せてしまうと、警報を消して終わりになる)。発生検出・保持・報知・リセットの4段構造は異常(アラーム)回路のラダー定番構造|発生・保持・ブザー・リセットの作り方で解説しています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 自己保持回路とは何ですか?わかりやすく教えてください。
A. 押しボタンを一度押してから離しても、出力が動き続ける回路の仕組みです。ラダー図では、起動用のX0のa接点に対して出力Y0自身のa接点を並列に置き、Y0が出たあとはそのY0のa接点を通って電流が流れ続けることで保持します。停止はX1のb接点をY0コイルの回路に直列に入れ、押されたときに電流の経路を切って解除します。英語では Self-holding circuit(Latching circuit)と呼ばれます。
Q2. 自己保持回路の使用例にはどんなものがありますか?
A. コンベアやポンプ・ファンの起動保持がわかりやすい例です。「起動ボタンを押す → モーターが回り始める → ボタンを離してもモーターが回り続ける → 停止ボタンを押したら止まる」という動作で、押している間しか回らなければ作業者はボタンを押し続けることになり、実用になりません。起動保持のほかに、原因が消えても記録を残しておきたい異常(アラーム)回路でも、この「保持する」考え方を使います。
Q3. 展開接続図(シーケンス回路図)やリレー回路ではどう組みますか?
A. 考え方はラダー図と同じで、起動ボタンと並列に自己保持用の補助a接点をつなぎ、停止ボタンのb接点をコイル回路に直列に入れます。リレーや電磁接触器で組む場合は、そのコイル自身の補助a接点を起動ボタンと並列に配線します。この並列接続が「記憶」の役割を果たすため、ボタンを離してもコイルへの通電が維持されます。
Q4. 自己保持が入らない・止まらないときはどこを確認すればいいですか?
A. 保持されない場合は、自己保持用の接点が起動接点と並列になっているかを確認します。接点そのものが抜けていると、押した瞬間だけ出力が出て離すと切れる寸動(インチング)と同じ動作になります。逆に起動接点と直列に入っていると、Y0がOFFのうちはその接点が開いているので回路がつながらず、出力が一度も入りません。あわせて、その接点が出力コイルと同じデバイス番号(Y0コイルならY0のa接点)かを見ます。止まらない場合は停止側の接点種別で、a接点・b接点版ならX1のb接点がY0コイルの回路に直列に入っているか、SET/RST版ならX1のa接点でRST Y0が実行される構成になっているかを確認します。
まとめ
- 自己保持回路:押しボタンを離しても出力が保持される回路。コンベア・ポンプ・ファン等の起動保持に使う
- a接点・b接点版:Y0補助a接点をX0と並列に置き、X1のb接点を直列に入れる。1ラングで完結。リレーシーケンスの経験がそのまま活きる
- SET/RST版:X0でSET、X1でRSTする2ラング構成。停止側はa接点になる。補助接点が不要でシンプル
- 使い分け:改修・移植案件はa接点・b接点版、新規はSET/RST版が多い。現場・客先の標準に合わせる
展開接続図(シーケンス回路図)の記号や読む順番の基礎は展開接続図(シーケンス回路図)の読み方:記号と読む順番を基礎から整理で整理しています。また、自己保持と組み合わせて使うインターロック回路についてはインターロック回路とは?b接点を使った安全制御の基本パターンも参考にしてください。
