電圧降下とは?原因・影響と対策|DC24V回路ほど効く理由【電気基礎】
制御盤や現場の配線で、盤の中では正常な電圧が出ているのに、配線の末端まで来ると機器がうまく動かない——そんな経験はないでしょうか。
その原因の多くが電圧降下です。電源から出た電圧は、配線を通る間に少しずつ下がり、末端にはそのままの電圧が届いていません。
この記事では、電圧降下がなぜ起きるのか、実務でどこに影響が出やすいのか、そしてどう考えて対処すればよいのかを整理します。特に見落とされがちな低電圧回路(DC24Vなど)での影響の大きさを中心に解説します。計算式の細かい使い分けや許容範囲の数値基準は、それぞれ専用の記事に譲ります。
電圧降下とは?
電圧降下とは、電流が流れることで配線や機器の抵抗によって電圧が低下する現象です。
たとえば100Vの電源から配線した場合でも、距離が長かったり電流が大きいと、 末端では98Vや95Vしか届かないことがあります。
なぜ電圧が下がるのか
電線には必ず抵抗があります。 この抵抗に電流が流れることで、電圧の一部が熱として失われます。
この「失われた分」が電圧降下であり、避けることはできません。
考え方の土台はオームの法則です。
電圧降下(V) = 電流(A) × 抵抗(Ω)
例:抵抗0.5Ωの配線に5A流れる場合 → 電圧降下は2.5V(0.5×5=2.5)です。実際の配線抵抗は太さと長さで決まるため、実務ではこの考え方をベースにした計算式を使いますが、詳しい式は後述のリンク先で扱います。
電圧降下が大きいと何が起こる?
- 照明が暗くなる
- モーターが起動しない・力が出ない
- 電子機器が不安定になる
さらに、配線で発生する熱が増えることで、被覆の劣化や火災の原因になることもあります。
制御盤の現場に置き換えると、センサーやソレノイドの手前で電圧が落ちて、動いたり動かなかったりするという形で現れることがあります。パッと見て配線が切れているわけではないため、原因の切り分けに時間がかかりやすいトラブルです。
低電圧回路ほど影響が大きい
電圧降下を考えるうえで、実務でもっとも見落とされやすいのがここです。同じ「2V下がる」でも、元の電圧が何Vかによって意味がまったく変わります。
| 回路電圧 | 2V降下したときの割合 |
|---|---|
| 100V | 2.0% |
| DC24V | 8.3% |
同じ2Vの降下でも、DC24V回路では4倍以上効いてきます。制御盤内のDC24V配線で電圧降下が問題になりやすいのは、このためです。100Vの感覚のまま「2Vくらいなら大丈夫だろう」と見積もると、低電圧回路では判断を誤ります。
実際にDC24V回路(電流2A・こう長20m・直流2線式)で電線の太さを変えて計算すると、次のようになります。
| 断面積 | 電圧降下 | 24Vに対する割合 | 末端に届く電圧 |
|---|---|---|---|
| 0.75mm² | 1.90V | 7.9% | 22.10V |
| 1.25mm² | 1.14V | 4.7% | 22.86V |
| 2.0mm² | 0.71V | 3.0% | 23.29V |
0.75mm²や1.25mm²は制御盤の配線でよく使われるKIV電線の定番サイズですが、こう長が20mあれば、この表のとおり電圧降下は無視できない大きさになります。細い電線を長く引き回すほど、末端の電圧はじわじわ下がっていきます。
ここで注意したいのは、判断の基準です。低圧配線の電圧降下は幹線・分岐回路それぞれ標準電圧の2%以下とすることが内線規程1310-1で示されていますが、これは幹線・分岐回路に対する基準であり、制御回路のDC24Vにそのまま当てはめられるものではありません。制御回路の場合は、末端に届く電圧(上の表でいう22.10V・22.86V・23.29Vなど)を求めたうえで、使用する機器のカタログに書かれた許容電圧範囲と照らし合わせて判断することになります。
電圧降下を小さくする基本的な方法
- 電線を太くする
- 配線距離を短くする
- 流れる電流を小さくする
この3つは、電圧降下の計算式の形を見ると理由がはっきりします。式は「長さ×電流÷断面積」という形をしており、長さと電流は分子にあるため大きいほど電圧降下が増え、断面積は分母にあるため太いほど電圧降下は減ります。式そのものの詳しい中身は後述のリンク先で扱います。
身近な例:スマホの充電が遅い理由
細くて長い延長コードでスマホを充電すると、充電が遅くなることがあります。これもコード内部で電圧降下が発生し、スマホに十分な電圧が届いていないためです。制御盤のDC24V配線と原理はまったく同じです。
どこまで下がってよいのか
低圧配線の電圧降下は、内線規程1310-1(電気設備の民間自主規格・勧告であり法令そのものではありません)で、幹線・分岐回路それぞれ標準電圧の2%以下とすることが目安とされています。ただし、こう長が長い場合の緩和や、制御回路での考え方の違いなど、押さえておきたい点がいくつかあります。詳しい基準は「電圧降下は何パーセントまで許される?内線規程の基準」で扱っています。
計算して判断する
ここまでで、電圧降下がなぜ起きるのか、どこで問題になりやすいのかは押さえられたはずです。実際の配線で「何V下がるか」を求めるには、配線方式(単相2線式・単相3線式・三相3線式)ごとの計算式を使います。式の詳しい中身と具体例は「電圧降下の計算方法をわかりやすく解説|単相・三相の計算式と具体例」にまとめています。
毎回手計算するのが面倒な場合は、条件を入力するだけで電圧降下を確認できるツールも用意しています。
👉 電気工事士の学科試験で電圧降下が出たら:計算問題の整理はこちら
まとめ
電圧降下は、電気を使ううえで避けられない現象です。しかし、仕組みを理解し、正しく計算・設計することでトラブルは防げます。
- 電圧降下は配線の抵抗によって必ず発生する。避けることはできないが、対策はできる
- 同じ2V降下でも、100Vなら2.0%、DC24Vなら8.3%と、元の電圧によって影響の大きさがまったく違う
- 制御盤のDC24V配線では、内線規程の2%をそのまま当てはめず、末端電圧を機器の許容電圧範囲と照らして判断する
- 電線を太くする・距離を短くする・電流を小さくするの3つが基本対策
まずは「なぜ起きるのか」「どこで効いてくるのか」を理解し、必要に応じて計算式やツールを活用しましょう。
