IP保護等級 一覧表|IP44・IP54・IP65・IP67の違い【JIS C 0920】
JIS C 0920(IEC 60529)に基づくIP保護等級の各数字の意味と試験内容、よく使われるIPコードの用途をまとめました。機器・制御盤の選定時の早見表として活用してください。あわせて「IP65とIP66は何が違うのか」「実際にカタログで見かけるIPコードの組合せ」「高圧洗浄に対応するIP69K」についても解説します。
IPコードの読み方
IPとは Ingress Protection(侵入に対する保護)の略で、「IP」に続く2桁の数字で機器の保護性能を表します。1桁目(第1特性数字)が固形異物・人体の接触に対する保護、2桁目(第2特性数字)が水の侵入に対する保護を示します。例えば「IP68」であれば、1桁目の6が完全防塵構造、2桁目の8が水中での継続使用が可能という意味になり、両方をあわせて「完全な防塵構造で水面下での使用が可能」な等級だと読み取れます。
この規格は国際電気標準会議(IEC)が定めたもので、日本国内ではJISがこれに準拠する形で規格化しています。制御盤やフィールド機器のカタログでは「IP54」のように必ずこの2桁がセットで表記されるため、まず1桁目と2桁目がそれぞれ何を保証しているかを分けて理解しておくことが選定の第一歩です。
第1特性数字(固形異物・接触に対する保護)
IPコードの最初の数字は、固形異物および人体の接触に対する保護レベルを示します。
| 数字 | 保護の内容 | 保護される接触の目安 | 試験内容 |
|---|---|---|---|
| 0 | 保護なし | — | — |
| 1 | 直径50mm以上の固形異物 | 手のひら | 球(Φ50mm)が侵入しないこと |
| 2 | 直径12.5mm以上の固形異物 | 指 | 球(Φ12.5mm)が侵入しないこと |
| 3 | 直径2.5mm以上の固形異物 | 工具の先端 | 球(Φ2.5mm)が侵入しないこと |
| 4 | 直径1.0mm以上の固形異物 | ワイヤーなど | 球(Φ1.0mm)が侵入しないこと |
| 5 | 粉塵(防塵形) | — | 危険な量の粉塵が侵入しないこと |
| 6 | 粉塵(耐塵形) | — | 粉塵が全く侵入しないこと |
1〜4は「手→指→工具の先端→ワイヤー」の順に、保護すべき対象がだんだん細くなっていく、と覚えると数字の意味が直感的につかめます。なお第1特性数字2の寸法は現行のIEC 60529/JIS C 0920で「直径12.5mm以上」と定義されています。
第2特性数字(水の侵入に対する保護)
IPコードの2番目の数字は、水の侵入に対する保護レベルを示します。数字が大きいほど厳しい条件に対応します。
| 数字 | 保護の内容 | 試験内容 | 試験条件(具体数値) |
|---|---|---|---|
| 0 | 保護なし | — | — |
| 1 | 鉛直落下する水滴(防滴I形) | 10分間の滴下試験 | 200mmの高さから3〜5mm/分の水滴、10分間 |
| 2 | 15°傾斜した状態の落下水滴(防滴II形) | 傾け4方向×10分 | 200mmの高さから15°の範囲・3〜5mm/分の水滴、10分間 |
| 3 | 60°以内の散水(防雨形) | 10分間の散水試験 | 200mmの高さから60°の範囲・10ℓ/分の放水、10分間 |
| 4 | あらゆる方向からの飛沫(防沫形) | 10分間の飛沫試験 | 300〜500mmの高さから全方向に10ℓ/分の放水、10分間 |
| 5 | あらゆる方向からの噴流(防噴流形) | 3分間の噴流試験 | 3mの距離から全方向に12.5ℓ/分・30kPaの噴流水、3分間 |
| 6 | 甲板上の条件・激しい噴流(耐水形) | 3分間の激しい噴流 | 3mの距離から全方向に100ℓ/分・100kPaの噴流水、3分間 |
| 7 | 一時的な水中浸漬(防浸形) | 水深1m・30分 | 水面下15cm〜1m、30分間 |
| 8 | 継続的な水中使用(水中形) | メーカー・ユーザー間で規定 | メーカーと機器の使用者間の取り決めによる |
試験条件の具体数値は、メーカー技術資料(JIS C 0920・JEM1030準拠)に基づいて記載しています。現行規格では細部が改正されている場合がありますので、正式な適合判定は最新のJIS C 0920/IEC 60529を確認してください。
第2特性数字7の「水面下15cm〜1m、30分間」は、機器の最高点が水面下15cm、最低点が水面下1mとなる状態で30分間水没させる試験を指します。単に「水深1mに沈める」のではなく、機器の上端・下端それぞれの水没深さが規定されている点に注意してください。
IP65とIP66は何が違うのか
カタログで迷いやすいのが、同じ「噴流」に対する保護であるIP65とIP66の違いです。試験条件を並べると差は明確です。
- IP□5:3mの距離から12.5ℓ/分・30kPaの噴流水を3分間
- IP□6:3mの距離から100ℓ/分・100kPaの噴流水を3分間
放水量で8倍(100ℓ÷12.5ℓ=8.0)、圧力で約3.3倍(100kPa÷30kPa≒3.33)という差があります。同じ「水をかけても大丈夫」という等級でも、IP66はIP65よりかなり強い水圧・水量を想定していることになります。洗浄用のホースを至近距離ではなく3m離れた場所からかける場面をイメージすると、その勢いの差が判断材料になります。
屋外に設置するだけで雨がかかる程度ならIP65で足りるケースが多い一方、工場内で定期的にホース洗浄を行う環境や、水量の多い散水設備が近くにある場合はIP66を検討する、という選び方が現実的です。ただし、いずれも「3mの距離・全方向」からの噴流を想定した試験であり、至近距離からの高圧洗浄やスチーム洗浄は、この2つの等級では想定されていません。そうした用途は後述するIP69Kの領域になります。
実在するIPコードの組合せ
IPコードは第1特性数字(0〜6)と第2特性数字(0〜8)を自由に組み合わせられるわけではなく、実際にカタログで流通している「標準的な保護構造の組合せ」があります。メーカー技術資料に示された組合せ表を以下に整理しました。
| 第1数字\第2数字 | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 0 | IP00 | — | — | — | — | — | — | — | — |
| 1 | IP10 | IP11 | IP12 | — | — | — | — | — | — |
| 2 | IP20 | IP21 | IP22 | IP23 | — | — | — | — | — |
| 3 | IP30 | IP31 | IP32 | IP33 | IP34 | — | — | — | — |
| 4 | IP40 | IP41 | IP42 | IP43 | IP44 | — | — | — | — |
| 5 | IP50 | IP51 | IP52 | IP53 | IP54 | IP55 | — | — | — |
| 6 | IP60 | — | — | — | IP64 | IP65 | IP66 | IP67 | IP68 |
この表から読み取れることが2つあります。1つは、IP45・IP56・IP57・IP58・IP61・IP62・IP63といった組合せは、この標準的な組合せ表には載っていないということです。カタログでこれらの表記をあまり見かけないのはこのためです。もう1つは、防塵性能(第1数字)が低いまま水の保護(第2数字)だけを高くする組合せ(例:IP38)は成立せず、水の保護を上げるには先に防塵性能を上げる必要がある、という構造になっている点です。実際、第1数字が6(完全防塵構造)の行では第2数字1〜3が空欄になっており、IP60の次はIP64へ飛んでいます。完全防塵構造にするような設計では、水に対しても飛沫程度では済まない環境が想定されるため、と考えると理解しやすいはずです。
なお、この表はあくまでメーカー技術資料に示された「一般的に流通している組合せ」であり、表に無い組合せが規格上禁止されているという意味ではありません。機器選定の際は、この表を「よく見る組合せの目安」として使い、実際の適合判定は個々の製品の試験成績で確認してください。
IP69K=高温・高圧洗浄への保護
食品工場や車両など、高温・高圧の水やスチームで洗浄する環境向けに、IP69(IP69K)という区分があります。これはドイツ規格DIN 40050 PART9で定められた、高温・高圧水・スチームジェット洗浄に対する保護規定です。
試験条件は、80℃の湯を指定された形状のノズルで10〜15cmの距離から、80〜100barの水圧(14〜16ℓ/分)で放水し、本体を水平方向に0度・30度・60度・90度の各方位に30秒ずつ回転させながら実施する、というものです。
IP66が「3mの距離から100kPaの噴流水」を想定しているのに対し、IP69Kは「10〜15cmという至近距離から80〜100barの高圧水」を想定しており、距離が桁違いに近く、80℃という湯温も加わる点が質的に異なります(barとkPaは単位が異なるため単純な換算比較はしていません)。食品工場のライン機器や、洗浄車両に搭載する機器など、至近距離からの高圧・高温洗浄が日常的に行われる現場では、IP66クラスでは想定外の条件になるため、IP69K対応の機器を選定する必要があります。
よく使われるIPコードと用途
制御盤・現場機器の選定でよく参照するIPコードと代表的な用途例をまとめました。
| IPコード | 用途例 |
|---|---|
| IP20 | 屋内制御盤(開放型)・電気室内機器 |
| IP22 | 屋内機器(上方からの滴下がある場所) |
| IP44 | 屋外・雨露がかかる場所 |
| IP54 | 工場内・粉塵や飛沫がある環境 |
| IP55 | 食品工場・洗浄がある環境 |
| IP65 | 屋外設置・防塵防噴流(ジェット水以外) |
| IP66 | 強い噴流がかかる場所 |
| IP67 | 一時的に水没する場所(屋外・水処理施設) |
| IP68 | 水中継続使用(潜水機器・水中センサー) |
よくある質問
制御盤にはIP54とIP65のどちらを選ぶべき?
IP54は「危険な量の粉塵が侵入しない」防塵構造で、水に対しては300〜500mmの高さから10ℓ/分の飛沫を10分間浴びても支障がない、という防沫レベルまでの保護です。一方IP65は完全防塵構造に加え、3mの距離から12.5ℓ/分・30kPaの噴流水を3分間浴びても支障がない性能を持ちます。屋内で粉塵や時々の水滴程度を想定するならIP54、屋外設置やホースでの洗浄が想定される現場ならIP65を検討する、というのが基本的な考え方です。
IP44とIP54は何が違う?
どちらも第2特性数字は4(あらゆる方向からの飛沫、防沫形)で水に対する保護は同じですが、第1特性数字が異なります。IP44の第1特性数字4は「直径1.0mm以上の固形異物(ワイヤーなど)が侵入しない」保護であるのに対し、IP54の第1特性数字5は「危険な量の粉塵が侵入しない」防塵形の保護です。粉塵の多い環境で選ぶならIP54、粉塵よりもワイヤーなど比較的大きめの異物や接触からの保護を重視するならIP44、という違いになります。
IP67とIP68の違いは?
IP67は「水面下15cm〜1m、30分間」という一時的な水中浸漬に対応する等級です。対してIP68は「メーカーと機器の使用者間の取り決めによる」継続的な水中使用に対応する等級で、深さや時間の条件は製品ごとに個別に規定されます。一時的に水をかぶる可能性がある程度ならIP67、水中で常時使用する用途ならIP68を選ぶ、という使い分けになります。
なぜIP45やIP56という表記をあまり見かけない?
IPコードは第1特性数字と第2特性数字を自由に組み合わせられるわけではなく、メーカー技術資料に示された「標準的な保護構造の組合せ」に沿って製品化されるのが一般的です。この組合せ表にはIP45・IP56・IP57・IP58といった組合せが含まれていないため、カタログでこれらの表記を見かけることはほとんどありません。ただし、これは規格上禁止されているという意味ではなく、あくまで「一般的に流通している組合せではない」という理解に留めてください。
