配線用遮断器(MCCB)と漏電遮断器(ELCB):制御盤での選び分け

試験で覚えることと現場で判断することは別

「配線用遮断器(MCCB)と漏電遮断器(ELCB)の違い」は電気工事士試験にも出ます。試験では定義・記号・用語の区別が問われます。しかし現場で必要な知識は「制御盤に実際に何を使うか」の判断基準です。

試験向けの整理は開閉器・漏電遮断器・配線用遮断器:学科での区別と現場名称の対応を参照してください。この記事では「現場でどちらを使うか」の判断に絞ります。

制御盤全体の機器構成については制御盤の中に何が入っている?主要機器の役割と配置をざっくり整理を参照してください。

MCCBとELCBの役割の違い

まず基本の整理です。

モーター回路でサーマルリレーも要る理由はサーマルリレーとブレーカーの違いは何か。過負荷保護と短絡保護はなぜ両方必要なのかに分けて書いています。

  • MCCB(配線用遮断器):過電流(短絡・過負荷)を検知して回路を遮断する。漏電は検知しない
  • ELCB(漏電遮断器):過電流に加え、地絡電流(漏電)も検知して遮断する。MCCBの機能にプラス漏電保護が加わった機器

ELCBはMCCBの上位互換ではありません。漏電検知の仕組みを内蔵している分、価格が高く、また電流の不平衡を検知するため高調波や長いケーブルの対地静電容量で誤トリップすることがあります。

制御盤のどの位置に何を使うか

実際の盤設計での使い分けの考え方です。

制御盤におけるELCB・MCCB・CPの使い分けをまとめた図。左=盤内の配置の単線イメージ。電源引き込みから主幹のELCB(漏電遮断器)に入り、ここが盤全体の地絡保護を担う(動力盤・制御盤を問わず安全の要)。そこから2系統に分岐し、(1)動力分岐(モーター系)はMCCB(主に短絡保護)→電磁開閉器MS(サーマルリレーがモーター過負荷保護を担う)→モーターの順、(2)制御電源・DC24V系はCP(サーキットプロテクタ)→パワーサプライ→DC24V制御回路の順。MCCBは容量が大きすぎて制御回路の保護には不向きである旨を注記。あわせてインバータ・サーボが入っている盤の注意として、出力配線の対地静電容量が大きいと主幹ELCBが誤トリップすることがあり、高調波・サージ対応品を使うか、その系統だけMCCBで保護し別途地絡対策を検討する旨を記載。右上=役割の違いは検知する対象の違いであり、MCCB(配線用遮断器)は過電流(短絡・過負荷)を検知して遮断するが漏電は検知しない、ELCB(漏電遮断器)は過電流に加えて地絡電流(漏電)も検知して遮断する。ただしELCBはMCCBの上位互換ではなく、価格が高いうえ電流の不平衡を検知する方式のため高調波や長いケーブルの対地静電容量で誤トリップすることがある。右中=AFとATは別の数字であり、AF(アンペアフレーム)はそのシリーズが対応できる最大電流の上限で外形サイズが決まるもの、AT(アンペアトリップ)は設定されたトリップ電流値でフレーム内で選択できるもの。例として50AF/30ATは最大50Aフレームの機器に30Aのトリップ設定をした状態を示す。AT選定の基本は負荷電流の合計×安全率(1.25程度)以上だが、保護協調のため下位ATは上位ATより小さくなるよう設計する。右下=ELCBの感度電流は目的で選ぶもので、30mAは人体保護用(感電防止)で住宅・低圧設備の標準、100・200・500mAは機器保護および地絡火災防止用、15・10mAは高感度で医療用や特殊用途。FA現場の制御盤主幹は30mA〜200mAが多い。下段の現場メモとして、MCCBのATはモーター定格電流の1.25〜2.5倍程度を選ぶこと(具体値は電技解釈の基準を確認)、インバータ・サーボ系統で30mA品が誤トリップするなら100〜200mAの高調波対応品へ変更することがあるが、感度電流を上げることは人体保護を薄くする方向の判断でもあるため必ず人体保護の観点を確認し設備の安全設計と合わせて決めること、ここでの数値は選定の考え方の目安であり実際の機種選定はメーカーのカタログと自社の設計基準・該当法令を必ず確認することを記載。

主幹(引き込み部)

盤への電源引き込み部分には漏電遮断器(ELCB)を設置するのが基本です。盤全体の地絡保護を担います。動力盤・制御盤を問わず、主幹ELCBは安全の要です。

ただし、インバータ・サーボドライバが入っている盤では注意が必要です。インバータの出力配線に対地静電容量が大きい場合、主幹ELCBが誤トリップすることがあります。この場合、インバータ専用の漏電遮断器(高調波・サージ対応品)を使うか、インバータ系統だけをMCCBで保護し別途地絡対策を検討します。

動力分岐(モーター系)

モーターへの分岐保護にはMCCBを使います。電磁開閉器(MS)のサーマルリレーがモーター過負荷保護を担うため、分岐MCCBは主に短絡保護の目的です。MCCBのAT(アンペアトリップ)はモーター定格電流の1.25〜2.5倍程度(電技解釈の基準を確認)の値を選びます。

制御電源・DC24V系

制御電源にはサーキットプロテクタ(CP)を使います。MCCBは容量が大きすぎて制御回路の保護には不向きです。CPの選定についてはCP30-BAの選び方・配線方法を参照してください。

フレームとATの選び方

MCCBにはフレーム(AF:アンペアフレーム)とAT(アンペアトリップ)の2つの数値があります。

  • AF(フレーム):そのシリーズが対応できる最大電流の上限。外形サイズが決まる
  • AT(トリップ電流):設定されたトリップ電流値。フレーム内で選択できる

例:50AF/30ATは、最大50Aフレームの機器に30Aのトリップ設定をした状態です。将来的に電流が増える可能性がある回路ではAFに余裕を持たせ、ATを現在の値に設定しておく設計もあります。

AT選定の基本は「負荷電流の合計 × 安全率(1.25程度)以上のAT値を選ぶ」です。ただし、保護協調(上位遮断器が先に動かないようにする)のために、下位ATが上位ATより小さくなるよう設計します。

ELCBの感度電流の選び方

ELCBには感度電流(mA)の設定があります。一般的な値は以下です。

  • 30mA:人体保護用。感電防止が目的の場合はこの値。住宅・低圧設備の標準
  • 100mA・200mA・500mA:機器保護・地絡火災防止用。誤トリップを防ぎたい場合に選ぶ
  • 高感度(15mA・10mA):医療用や特殊用途

FA現場の制御盤主幹には30mA〜200mAが多いです。インバータ・サーボが入っている系統で30mA品が誤トリップするなら、100mA〜200mAの高調波対応品に変更することがあります。感度電流を上げる場合は人体保護の観点を確認し、設備の安全設計と合わせて判断します。

よくある選定ミスと注意点

  • インバータ盤にELCBをつけて誤トリップを繰り返す:高調波・静電容量対応品でなければ誤動作します。インバータ付き盤にはELCBの仕様を確認してから選ぶ
  • AT値をとりあえず最大にする:AT値が大きすぎると保護が機能しません。負荷電流に合わせた値を選ぶ
  • MCCBとELCBの保護協調を確認しない:分岐MCCBのATが主幹ELCBのATより大きいと、事故時に主幹が先に動いて全停止します

よくある質問(FAQ)

Q1. 漏電遮断器(ELCB)とは何ですか?
A. 過電流(短絡・過負荷)に加えて、地絡電流(漏電)も検知して回路を遮断する機器です。制御盤では電源引き込み部の主幹に設置し、盤全体の地絡保護を担うのが基本です。動力盤・制御盤を問わず、主幹ELCBは安全の要です。

Q2. 漏電遮断器とブレーカー(配線用遮断器)の違いは何ですか?
A. 検知する対象が違います。配線用遮断器(MCCB)は過電流(短絡・過負荷)を検知して遮断しますが、漏電は検知しません。漏電遮断器(ELCB)はMCCBの機能に漏電保護を加えたものです。ただしELCBは単純な上位互換ではなく、漏電検知の仕組みを内蔵している分だけ価格が高く、高調波や長いケーブルの対地静電容量で誤トリップすることがあります。

Q3. 漏電遮断器が落ちる(誤トリップする)原因は何ですか?
A. インバータ・サーボドライバが入っている盤でよくあるのが、出力配線の対地静電容量や高調波による誤トリップです。ELCBは電流の不平衡を検知する方式のため、地絡していなくても動作することがあります。対策は、高調波・サージ対応品のELCBを使うか、インバータ系統だけをMCCBで保護して別途地絡対策を検討することです。感度電流を上げて対処する場合は、人体保護の観点を確認したうえで設備の安全設計と合わせて判断します。

Q4. 漏電遮断器・配線用遮断器は英語で何といいますか?
A. 漏電遮断器はEarth Leakage Circuit Breaker、略してELCBです。配線用遮断器はMolded Case Circuit Breaker、略してMCCBです。カタログや図面ではELCB・MCCBの略称で書かれるのが一般的です。

まとめ

制御盤でのMCCB・ELCB選び分けの要点です。

  • 主幹:ELCB(漏電・地絡保護)。インバータ系は高調波対応品を確認
  • 動力分岐:MCCB(短絡保護)。ATはモーター定格電流の1.25〜2.5倍
  • 制御・DC回路:サーキットプロテクタが適切
  • ELCBの感度電流は30mA(人体保護)か100〜200mA(機器保護)を用途で選ぶ