SSR(ソリッドステートリレー)とは?有接点リレーとの違いと使い分け
SSR(ソリッドステートリレー)とは
SSR(ソリッドステートリレー:Solid State Relay)は、電磁石で機械的に接点を動かす有接点リレーとは違い、フォトカプラと半導体スイッチング素子(トライアックやMOSFETなど)だけで負荷回路をON/OFFする部品です。可動する接点そのものが存在しないため、「摩耗する部品がない」というのが構造上の大きな特徴になります。
制御盤の中でSSRがどんな位置づけの機器なのかは、制御盤の中に何が入っている?主要機器の役割と配置をざっくり整理でも触れています。
ここから先は「SSRは有接点よりすごい」という単純な話ではなく、同じ形状の製品で比べたときに何がどう違うのかを、オムロンの公式データシートの数値だけを使って具体的に見ていきます。
有接点リレーとの違いを、同じ形状の製品で比べる
SSRと有接点リレーを比較する記事は世の中に数多くありますが、たいてい「形が違う製品同士」を比べているため、性能差なのか形状差なのか判断がつきにくいという問題があります。
オムロンの「スリムI/Oリレー」シリーズには、形G2RV-ST(有接点)と形G3RV-ST(SSR)という、同じ外形・同じ実装方式の製品が揃っています。質量はどちらも約30g、保護等級はどちらもIP20です。つまり形状と設置条件をそろえた状態で、有接点とSSRの素の性能差だけを比較できます。
| 項目 | G2RV-ST(有接点) | G3RV-ST(SSR) |
|---|---|---|
| 開閉容量(AC・抵抗負荷) | AC250V 6A | AC240V 2A(25℃) |
| 開閉容量(DC・抵抗負荷) | DC30V 6A | DC24V 3A(25℃) |
| 動作時間 | 20ms以下 | 0.2ms以下(-D-H)/3ms以下(-AL)/6ms以下(-D)/11ms以下(-A) |
| 復帰時間 | AC・AC/DC:40ms以下/DC:20ms以下 | 0.4ms以下(-D-H)/21ms以下(-D)/31ms以下(-A、-AL) |
| 寿命の指標 | 電気的耐久性 a接点7万回以上/b接点5万回以上(機械的500万回以上) | MTTFd(参考値)1,000年以上 |
| 漏れ電流 | (接点が機械的に開くため記載なし) | 5mA以下(AC200V、50/60Hz)/10µA以下(DC24V) |
| 出力側の損失 | 接触抵抗100mΩ以下 | 出力オン電圧降下1.6V(RMS)以下(AC出力)/出力オン抵抗0.3Ω以下(DC24V、DC出力) |
| 最大開閉ひん度 | 機械的18,000回/h/電気的1,800回/h(定格負荷) | (記載なし) |
| 使用周囲温度 | −40〜+55℃ | −30〜+55℃(使用時) |
| 質量 | 約30g | 約30g |
| 保護等級 | IP20 | IP20 |
出典: G2RV-ST/G3RV-STデータシート p.5(G2RV-ST定格)、p.6(G2RV-ST性能)、p.12(G3RV-ST特長)、p.17(G3RV-ST性能)
この表から読み取れることを、次の章から一つずつ具体的に見ていきます。
SSRが有利な点①:寿命
G2RV-ST(有接点)の寿命は「電気的耐久性 a接点7万回以上/b接点5万回以上(機械的500万回以上)」という開閉回数で表されています(a接点=常時開いている側の接点、b接点=常時閉じている側の接点)。有接点リレーは物理的に接点が動く以上、動作回数が増えるほど摩耗が進み、いつか寿命に到達します。
一方G3RV-ST(SSR)は接点が存在しないため、寿命の指標そのものが「MTTFd(参考値)1,000年以上」という時間の単位で示されています。同じ「寿命」という言葉でも、有接点は回数で、SSRは時間で語られる点が根本的に違います。
開閉頻度が高い用途ほど、有接点は電気的耐久性の上限に早く到達しやすくなります。SSRはこの摩耗という概念自体を持たないため、開閉回数がかさむ箇所では有利に働きやすい部分です。
SSRが有利な点②:動作速度
動作時間はG2RV-STが20ms以下であるのに対し、G3RV-STは仕様(形式)によって0.2ms以下(-D-H)〜11ms以下(-A)まで幅があります。最速の-D-H仕様で比べると20ms以下と0.2ms以下で、単純計算で約100倍の差になります。
復帰時間(OFFになるまでの時間)についても、G2RV-STのAC・AC/DCタイプが40ms以下、DCタイプが20ms以下であるのに対し、G3RV-STは0.4ms以下(-D-H)〜31ms以下(-A、-AL)です。いずれの仕様でも、機械的に接点を動かす必要がない分、SSRの応答は有接点より速い側に振れています。
SSRが不利な点①:同じ形状でも容量が小さい
寿命・速度で有利なSSRですが、同じ形状のG2RV-STとG3RV-STを並べると、開閉容量には明確な差があります。抵抗負荷でのAC開閉容量はG2RV-STがAC250V 6Aであるのに対し、G3RV-STはAC240V 2A(25℃)。同じ筐体サイズでも容量は約1/3にとどまります。
DC側も同様で、G2RV-STのDC30V 6Aに対し、G3RV-STはDC24V 3A(25℃)と約半分です。「形が同じだから性能も同等」ではなく、形状を維持したまま半導体で開閉させる以上、扱える電流には制約があるという理解が必要です。大きな電流を切りたい箇所を無条件にSSRへ置き換えると、容量不足になりかねません。
SSRが不利な点②:OFFにしても漏れ電流が流れる
G2RV-ST(有接点)は接点が機械的に開くため、漏れ電流という項目自体がデータシートに存在しません。切れば物理的にゼロです。対してG3RV-ST(SSR)は、OFF状態でも半導体側にわずかな電流が流れ続け、漏れ電流は5mA以下(AC200V、50/60Hz)/10µA以下(DC24V)と規定されています。
SSR全般で見ても、漏れ電流の値は機種によって幅があります。標準タイプはAC100Vにて5mA以下・AC200Vにて10mA以下ですが、低漏れ電流タイプではAC100Vにて2.5mA以下・AC200Vにて5mA以下まで抑えられています。DC開閉タイプでは標準5mA以下(DC50Vにて)に対し、低漏れ電流タイプは0.1mA以下です。
この漏れ電流は「切ったつもりでも完全にゼロにならない」という形で現場に影響します。特にPLCの入力端子などインピーダンスの低い機器につながっていると、漏れ電流だけでONと誤認識される場合があります。微小負荷を扱う回路や、OFF時に確実に電圧を落としたい回路では、低漏れ電流タイプを選定候補に入れる価値があります。
SSRが不利な点③:ONでも電圧が落ちて発熱する
G2RV-ST(有接点)はONになった際の接触抵抗が100mΩ以下と非常に小さく、電圧降下はほぼ無視できます。対してG3RV-ST(SSR)は、AC出力で出力オン電圧降下1.6V(RMS)以下、DC出力(DC24V)で出力オン抵抗0.3Ω以下という値が示されています。
この出力オン電圧降下は、AC出力タイプであればG3F・G3H・G3RV-STのいずれも共通して1.6V(RMS)以下(G3Fの一部機種では1.5V以下)です。DC出力側ではG3Hが3V以下(出力オン抵抗1.25Ω以下)、G3RV-STが出力オン抵抗0.3Ω以下(DC24Vにて)となっており、機種によって値が変わります。
「電圧降下×負荷電流」がそのままSSR内部の損失(発熱)になります。たとえばG3RV-STのAC開閉容量の上限である2Aで考えると、1.6V×2A=3.2Wが通電中ずっとSSR内部で熱として出続けている計算になります。有接点は接点が閉じればほぼ0に近い抵抗ですが、SSRは通電している間じゅう、この損失が発生し続ける点が構造的な違いです。
DC24V回路のように電圧が低い系統では、この電圧降下の影響がより大きく出ます。G3HのDC出力で3V落ちるケースを例にすると、負荷側にかかる電圧は24V−3V=21Vです。100V系・200V系の交流回路では気にならない電圧降下でも、DC24V回路では無視できない比率になります。
盤内設計の注意:密着して並べると負荷電流を1/2以下に
前章の電圧降下は「SSRは通電中ずっと発熱する」という話でした。この熱をどう逃がすかは、SSR特有の設置上の注意点につながります。
G3F(形MYと同一形状のSSR)の資料には、次のような記載があります。
「外壁が放熱板になりますので、2個以上集合取りつけをされる場合に周囲温度の上昇に注意し、通風のよい状態になるよう配慮してください。通風のない集合取りつけ状態では、負荷電流を1/2以下に低減してご使用ください。」
SSRは本体の外壁そのものが放熱板を兼ねる構造です。有接点リレーのように接点の開閉だけで熱をほとんど出さない部品とは違い、SSRを盤内で隙間なく並べて取り付けると、隣接する本体同士で熱がこもります。その結果、通風が確保できない集合取りつけの状態では、カタログに書かれた定格電流をそのまま使えず、負荷電流を1/2以下に下げて使う必要が出てきます。
盤内の発熱源はSSRだけではありません。盤全体の熱設計については盤内温度が上がる原因と対策まとめ|換気ファン・熱交換器・盤用クーラーの選び方もあわせて確認してください。
誘導負荷なら過電圧吸収素子は外付けが必要
もう一つ見落とされやすいのが、過電圧に対する保護です。G3Fの資料には次のように明記されています。
「過電圧吸収素子は内蔵しておりませんので、誘導負荷で使用される場合は必ず過電圧吸収素子を接続してください。」
「SSRを使えばサージ対策まで内蔵済みだろう」という思い込みは誤りです。電磁弁やコイル系の誘導負荷を切る場合は、SSR側とは別に過電圧吸収素子(バリスタやCRスナバなど)を外付けする必要があります。具体的な選び方はコイルのサージ対策|ダイオード・バリスタ・CRの使い分けと接続方向で整理しています。
なお、DC開閉用のSSRについては、負荷の接続先がSSR出力端子の+側・−側のどちらでも使用できるという記載もあります。極性を気にしすぎなくてよい点は、配線設計上のちょっとした安心材料です。
ゼロクロスあり/なしと、動作時間のトレードオフ
SSRのAC出力(トライアック)タイプには、形式構成上「A(ゼロクロス機能あり)」と「AL(ゼロクロス機能なし)」という区分があります。DC出力タイプはMOSFETを使う「D」です。
この区分は動作時間にそのまま影響します。ゼロクロスなし(-AL)の動作時間が3ms以下であるのに対し、ゼロクロスあり(-A)は11ms以下と、ゼロクロス機能を付けた分だけ動作が遅くなります。これは交流電圧がゼロになるタイミングを待ってからスイッチングする方式であるためで、速さを取るか、電圧がゼロになる点での切り替えを取るかというトレードオフです。
選定時は「ゼロクロスあり/なし」と「動作時間」がセットで決まる項目だと理解しておくと、カタログの型式末尾の意味が読み取りやすくなります。
MY・LYと同じ形状で差し替えられる
オムロンのSSRには、既存の有接点リレーと同じ外形を持つ製品系列があります。G3F/G3FDは「形MYと同一形状」、G3H/G3HDは「形LY1、LY2バイパワーリレーと同一形状」のSSRです。
MY・LYは制御盤で広く使われている有接点リレーで、たとえばMY2Nのような型式は中間リレーとは?PLC出力に直接負荷をつないではいけない理由でも触れている通り、盤内の中間リレーとして定番の存在です。同じ形状のSSRが用意されているということは、盤の設計や配線を大きく変えずに「有接点で寿命が足りなくなった箇所だけをSSRに差し替える」という現実的な移行ができる、ということでもあります。
結局どちらを使う? 用途別の考え方
ここまでの内容を整理すると、SSRと有接点リレーは「どちらが優れているか」ではなく、「何を優先するか」で選ぶものだと分かります。
- 開閉頻度が高い・高速な応答が要る:G3RV-STのMTTFd 1,000年以上、動作時間0.2ms以下(-D-H)という数値が示す通り、SSRが有利になりやすい領域です。
- 大きな電流を切りたい・回路をシンプルに保ちたい:G2RV-STのAC250V 6A、漏れ電流なし、ほぼ無視できる電圧降下という特性から、有接点リレーの方が扱いやすい領域です。
- 微小負荷やOFF時の確実な遮断が必要:SSRを使うにしても、標準タイプではなく低漏れ電流タイプを検討する価値があります。
- 誘導負荷を切る:SSR・有接点どちらの場合も、サージ対策(有接点はコイル側、SSRの場合は負荷側の過電圧吸収素子)は別途必要です。
- 盤内に複数台まとめて取り付ける:SSRは通風を確保するか、負荷電流を1/2以下に下げて使う前提で配置を考える必要があります。
「新しい部品だから」「速いから」という理由だけでSSRに寄せるのではなく、上記のような容量・漏れ電流・発熱の制約とセットで比較検討することが、選定を誤らないための基本になります。
まとめ
- SSRは接点を持たない半導体スイッチ。G2RV-ST(有接点)とG3RV-ST(SSR)は同じスリムI/Oシリーズ(質量約30g・IP20)のため、形状をそろえた素の性能比較ができる
- 寿命はSSRが有利:有接点は電気的耐久性7万回以上(G2RV-ST)に対し、SSRはMTTFd 1,000年以上(G3RV-ST)
- 速度もSSRが有利:動作時間20ms以下(G2RV-ST)に対し、SSRは0.2ms以下(G3RV-ST -D-H)まで速い仕様がある
- 容量はSSRが不利:同じ形状でAC開閉容量は約1/3(AC250V 6A→AC240V 2A)
- SSRはOFFでも漏れ電流が流れる(5mA以下/AC200V、10µA以下/DC24V)。標準タイプと低漏れ電流タイプがある
- SSRはONでも電圧が落ちて発熱する(出力オン電圧降下1.6V以下など)。盤内で密着させると負荷電流を1/2以下にする必要がある
- SSRは過電圧吸収素子を内蔵していない。誘導負荷を切るなら外付けが必須
- G3F・G3HはMY・LYと同一形状のため、盤設計を変えずに部分的にSSRへ移行できる
SSRと有接点リレー、どちらが優れているという結論にはなりません。開閉頻度・電流容量・漏れ電流・発熱・盤内の設置環境という条件をそれぞれ照らし合わせて、使い分けるのが実務的な判断です。
一次出典
本記事の数値は、以下のオムロン公式データシートに基づいています。実際の選定・設計時は、必ず最新版のデータシートをメーカー公式サイトで確認してください。
- 形G2RV-ST/G3RV-ST データシート
- 形G3F/G3FD データシート
- 形G3H/G3HD データシート
