電磁開閉器(MS)とは?MCとサーマルリレーの組み合わせを理解する
MSとMCは何が違うのか
電磁接触器(MC)と電磁開閉器(MS)の違いを聞かれたとき、「MSはMCにサーマルリレーをつけたもの」と即答できれば現場では十分です。
ただし、「なぜ組み合わせるのか」「単体で買うかセットで買うか」の判断は、知っておかないと発注でミスします。この記事ではMS = MC + THRの構成を整理し、現場での使い分けを説明します。
MS(電磁開閉器)の構成
電磁開閉器(MS、マグネットスイッチとも呼ばれる)は次の2つで構成されます。
- MC(電磁接触器):コイルで主接点を開閉し、モーター等の動力回路をON/OFFする
- THR(サーマルリレー):モーターが過負荷状態になったとき、設定電流を超えると接点を開き保護する
MCが「動かす」役割、THRが「守る」役割です。この2つがセットになっているのがMSです。
制御盤の主回路にモーターがあれば、ほぼ必ずこの構成が入っています。制御盤全体の機器配置については制御盤の中に何が入っている?主要機器の役割と配置をざっくり整理を参照してください。
単体購入とセット品:どちらを選ぶか
MCとTHRは別々に購入することも、最初からセットになった製品(電磁開閉器として販売)を購入することもできます。判断の基準は以下です。
セット品を選ぶ場合
- 標準的なモーター保護用途で、特別な仕様がない
- 発注の手間を省きたい
- 同一メーカーで組み合わせの確認が不要
三菱電機の「MSO-T」シリーズ、富士電機の「SW」シリーズ、オムロンの「J7KNA」など、各メーカーがセット品を販売しています。
単体で買い分ける場合
- MCだけを大量に使う(制御回路のON/OFF用途でサーマルが不要)
- インバータ駆動のモーターで、過負荷保護をインバータ側に任せる設計
- 既存盤のMCだけが故障して交換する(THRは生きている)
- 大容量のモーターで、MCとTHRのサイズが別々になる
インバータ駆動の場合、モーターの過負荷保護はインバータの電子サーマル機能で行うことが多いです。この場合MCだけを選定し、MSにしない設計もあります。ただし、インバータが停止してもモーターが回り続けるような設計では、MCでの主回路遮断は必要です。
MCとTHRの組み合わせルール
単体で買い分ける場合、MCとTHRの組み合わせには適合確認が必要です。
THRが受け持つ過負荷保護と、ブレーカーが受け持つ短絡保護の違いはサーマルリレーとブレーカーの違いは何か。過負荷保護と短絡保護はなぜ両方必要なのかにまとめています。
- 同一メーカーの場合、カタログに「適用接触器」が明記されている
- 異メーカーの組み合わせは原則避ける(取り付け穴・直付け寸法が合わない)
- THRの整定電流範囲がモーターの定格電流をカバーできるか確認する
THRの整定電流の決め方についてはサーマルリレーの整定電流の決め方:モーター銘板から逆算する手順で詳しく解説しています。
MSの主接点定格の選び方
MCと同様、MSの主接点容量はモーターの定格出力(kW)と使用カテゴリ(AC-3)で選びます。三菱のMSOシリーズを例にすると、型式の末尾の数字がフレームの呼称で、数字が大きいほど容量が上がります。ただし呼称が違っても外形が同じ組み合わせ(MSO-T50 と MSO-T65 は同寸)があるので、盤内に収まるかはカタログの外形寸法で確認してください。
モーターの銘板に記載された「定格電流(FLA)」を確認し、その値をTHRの整定範囲がカバーするMS/MCを選ぶのが正しい手順です。
電磁接触器(MC)の選定の詳細については電磁接触器(MC)とは?仕組みとコイル電圧・主接点容量・補助接点の選び方を参照してください。
現場でよくあるトラブルとその原因
THRがトリップして運転できない
整定電流がモーター定格電流より低すぎると、通常運転中でもトリップします。逆に高すぎると過負荷保護が働かず、モーターが焼損します。設定値の確認が最初の手順です。
MC主接点の溶着
モーターの始動電流(全電圧始動では定格の5〜7倍)に耐えられない小さいMCを使うと、始動時に主接点が溶着します。AC-3定格で選ぶことが前提です。
コイルが焼ける
コイル電圧と制御電源電圧のミスマッチが原因であることが多いです。AC200VコイルにDC24Vを印加した場合はコイルが動かず、逆にDC24VコイルへAC200Vを印加した場合は焼損します。
よくある質問(FAQ)
Q1. 電磁開閉器は英語で何といいますか?別名や記号も教えてください。
A. 英語では Magnetic Switch(マグネットスイッチ)または Magnetic Starter と呼ばれ、図面やカタログでは頭文字の「MS」で表記します。日本語でも「マグネットスイッチ」という別名で呼ばれることがあります。構成要素の電磁接触器は「MC」(Magnetic Contactor)、サーマルリレーは「THR」(Thermal Overload Relay)と略します。
Q2. 電磁開閉器の内部構造はどうなっていますか?
A. 電磁接触器(MC)とサーマルリレー(THR)をひとつにまとめた構造です。MC側はコイル・主接点3極・補助接点で構成され、コイルに電圧をかけると主接点が閉じてモーターの動力回路をON/OFFします。THR側は主回路の電流が流れる発熱体(バイメタル)とトリップ接点で構成され、整定電流を超えた状態が続くと接点を開いてモーターを保護します。
Q3. 電磁開閉器の結線図はどう読めばいいですか?
A. 主回路は電源(R/S/T)→MCの主接点3極→THRの発熱体→モーター(U/V/W)の順に直列につなぎます。制御回路は押しボタン(BS1)→THRのb接点→MCコイルのループで、THRがトリップするとb接点が開いてMCコイルが消磁し、主接点が開いてモーターが停止します。「動かす回路」と「守る回路」が制御回路側のb接点でつながっている、と読むのがポイントです。
Q4. 電磁開閉器はどんなときに使いますか?MC単体との使い分けを教えてください。
A. モーターの運転と過負荷保護を1台で済ませたい標準的な用途では、セット品の電磁開閉器(MS)を使います。一方、制御回路のON/OFFだけでサーマルが不要な場合、インバータ駆動で過負荷保護をインバータの電子サーマルに任せる設計、既存盤のMCだけを交換する場合などは、MC単体を選びます。単体で買い分けるときは、同一メーカーのカタログでMCとTHRの適合を確認します。
まとめ
電磁開閉器(MS)の要点です。
- MS = MC + THR。MCが動かし、THRが守る
- セット品は標準用途に効率的。インバータ駆動や交換用途は単体の検討も必要
- 組み合わせは同一メーカーで確認するのが基本
- 整定電流の設定はモーター銘板の定格電流から決める
